イトカメムシは既に昨年の秋掲載したが、この時は虫が撮影の途中で行方不明になってしまい、充分撮影することが出来なかった。今回は、ゆっくり撮影出来たので、もう一度掲載することにする。
体長は7mm前後と決して小さくはない。しかし、何分にも体の幅が0.5mmにも達しないので、翅が光を反射でもしない限り、中々目に付かない虫である。葉の上に留まったヒトスジシマカよりも、ずっと目立たない。
イトカメムシの成虫。ユスラウメの葉上に居た(2008/08/09)
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イトカメムシはイトカメムシ科に属し、この仲間は日本にはたった4種しか棲息していない。しかし、イトカメムシは決して珍しい虫ではなく、注意していると彼方此方で見ることが出来る。
触角を振り上げジッとたたずんでいる(2008/08/09)
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前回はコナラの葉裏に居たが、今回は
ユスラウメの葉上に居た。葉っぱの上で、写真に示した様な格好をして、微動だにすることなく、一日中たたずんでいた。
以前は植食性とされていた様だが、今では捕食性の強いカメムシとされている。葉の上で一日中微動だにしないと言うのは、
カマキリの幼虫と同じ行動である。
正面から見たイトカメムシ.妙な顔をしている(2008/08/09)
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次の日には、もうユスラウメの葉上には居なかった。しかし、同じ個体か否かは分からないが、フヨウの葉裏にまたイトカメムシを見付けた。フヨウには僅かだが、ワタアブラムシ(
ワタムシのワタではなく、繊維植物のワタ)が寄生している。この辺りでは、真夏には珍しいアブラムシである。これを狙ってやって来たのかも知れない。
斜め前から(2008/08/09)
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写真を拡大してみると(下の写真)、背中にかなり鋭い棘があり、また中肢と後肢の間の体側側にも妙な棘状の構造がある。「日本原色カメムシ図鑑」のヒメイトカメムシの項を見ると、小楯板の「基部に針状の突起がある」と書かれているので、種は異なるが、前者はこれであろう。しかし、この小楯板の突起がイトカメムシ科の全種にあるのかは、調べてみたが分からなかった。
上の写真の部分拡大.背中と体側に妙な突起がある(2008/08/09)
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カメムシ成虫の臭線開口部は中肢と後肢の間の体側側にある。ここから臭い匂いを出す。恐らく上の写真に見える妙な棘状構造は、臭線の開口部を囲む突起であろう。クヌギカメムシ科は全種が臭線の開口部に針状突起を持つが、イトカメムシ科も開口部に特別な構造を持つのかも知れない。